修復的対話(RJ)とは

修復的対話は、「対話によって、トラブルを平和的に解決する」という考え方に基づいています。これは決して新しいものではなく、世界の先住民が平和的な問題解決の方法として、昔から行ってきたものです。

 

例えば、北米のネイティブアメリカンの「ピースメーキング」、ハワイの先住民の「ホ’オポノポノ」、ニュージーランドのマオリ族の「ワカハ」、南アフリカの「ウブントゥ」など、世界の多くの地域で同様の方法が行われてきました。

 

人はひとと関わりながら生きています。共に喜び、共に悲しみ、気持ちを分かち合いながら関係を築いています。

 

しかし人とひととの関係は、時に崩れる場合もあります。ケンカやイジメもその原因となるでしょう。そんな人間関係の中で受けた傷を癒し、望ましい状態までに快復するためにどうすれば良いかを、平和的かつ協働的に探る方法であり、その根本原理は人間尊重です。

修復的対話の理念と定義

Principle

修復的対話において、もっとも基本的かつ重要なことは人間尊重です。お互いを尊重する姿勢は平和的な対話のベースとなります。

 

Definition

修復的対話の第一人者であるハワード・ゼアは、以下のように定義しています。

修復的対話とは、個人あるいは集団が

①受けた傷を癒し、事態を望ましい状態に戻すために

②問題に関係がある人たちが参加し

③損害やニーズ、及び責任と義務を全員で明らかにすると同時に

④今後の展望を模索する過程である

 

Rule

対話に際して以下の4つのルールがあります。

 

①お互いに尊重する

②相手の話に耳を傾ける

③相手を非難しない

④話したくないときは話さなくてもいい

 

この他に、対話の場で話されたことを他の場所で話したりしないということ、対話への参加はあくまでも自主的なものであることも忘れてはならないことです。

 

修復的対話と一般的な話し合いと異なる点は、参加者全員の対等性と発言の機会を保証するところです。

 

 

 


修復的対話の態様

修復的対話には、<コンファレンス>と<RJサークル>、ふたつの方法があります。その考え方は同じですが、目的と対象には違いがあります。

 

Conference

対人あるいは集団間のトラブルを、当事者同士が対話によって平和的に解決しようとする方法

 

コンファレンスの場合は、対立が明確、あるいは被害者と加害者が存在する中での関係の修復が主眼になります。ファシリテーターは中立的なスタンスを保持し、自分の意見は述べずに、対話がスムーズに進行するように努めます。

 

RJ circle

特定のテーマに関する対話によって、人間関係の構築や相互理解を目指す方法

 

RJサークルの場合は、さまざまなテーマで話し合いをします。たとえば人間関係作り、相互理解の促進、信頼感の醸成、表現力の向上のためです。キーパーも参加者として自分の意見を述べることができます。

 

 

 

 

 


修復的司法と修復的対話

英語でRestorative Justiceと表記します。わが国では、刑事司法分野において取り入れられてきた経緯があるため、「修復的司法」と訳されてきました。

 

しかし、この邦訳は司法分野以外での取り組みには適さないため、対話を主体とすることに着目して、私たちは「修復的対話」と呼んでいます。他に「修復的正義」や「修復的実践」と称されることもあります。

 

領域に関係なく修復的なアプローチ全体を表すときには「RJ」と略記することも多いです。

 

history

①1974年にカナダのキッチナーでRJが初めて少年事件に適用され、その後北米を中心に広がる

 

②1989年に成立した「ニュージーランドの家族及び少年法」では、事件を起こした少年はすべて家族グループコンファレンス(FGC)に参加することとされた。

 

③1995年、南アフリカのアパルトヘイト廃止後に設置された「真実和解委員会」(TRC:Truth and Reconciliation Commission)や、東ティモール、アルゼンチン、シェラシオネ、ペルーなど、多くの国で紛争後の対処手段として取り入れられている。

 

④1990年代半ばからは、カナダ、アメリカ、イギリス、オーストラリア、ニュージーランドなど、世界各地の学校で取り組みが展開されている。